加齢男性・性腺機能低下症(LOH症候群)は、主に男性ホルモン(テストステロン)の低下によって起こる体と心の不調を指します。加齢に伴って自然に低下する場合もありますが、ストレスや生活習慣なども影響することが知られています。
テストステロンの主な作用には様々あることが知られています。
| 性機能の維持 | 性欲の維持、勃起機能のサポート |
|---|---|
| 筋肉・骨への作用 | 筋肉量の維持・増加、骨密度の維持(骨粗しょう症予防) |
| 代謝への影響 | 内臓脂肪の蓄積を抑制、インスリン感受性の改善(糖代謝に関与) |
| 精神・認知機能 | 意欲・活力の維持、集中力・判断力の保持、抑うつの予防 |
| 全身の健康維持 | 心血管系の健康に関与、サルコペニア予防 |
テストステロンは単なる「男性らしさ」のホルモンではなく、身体・代謝・精神を包括的に支える全身ホルモンです。低下すると下記の症状を引き起こします。
| 性機能の症状 | 性欲低下、勃起障害(ED) |
|---|---|
| 精神・心理の症状 | 抑うつ気分、意欲低下、集中力低下、不安感 |
| 身体の症状 | 疲れやすい、筋力低下、体脂肪増加、骨密度低下 |
これらは単独ではなく、いくつかが同時に現れることが多いのが特徴です。
また、テストステロン低下は単なる症状にとどまらず、糖尿病、動脈硬化(心筋梗塞・脳梗塞)、骨粗しょう症、サルコペニアなどの発症や悪化に関連すると考えられています。
診断は「症状」と「ホルモン値」の両方が重視されています。
質問票(Aging Males' Symptoms scale(AMS)スコア)などで、症状の程度を確認します。AMSスコアはスクリーニングに用いるよりは治療効果のモニタリングにより有効とされています。
下記の17項目のそれぞれに症状を主観的に(1:なし ~ 5:非常に強い)で判断して点数をつけていきます。症状の期間は過去数週間を目安にしてください。
■ 心理的症状
■ 身体的症状
■ 性機能症状
■ その他(身体・精神複合)
1から17の項目のすべての点数を合算して評価します。
症状を確認したのちに血液検査(テストステロン値)を測定します。目安としては以下のとおりです。
| 総テストステロン | 約250 ng/dL未満 |
|---|---|
| 遊離テストステロン | 約7.5 pg/mL未満 |
重要なのは、数値だけでなく「症状との一致」です。ガイドラインでも数値のみで機械的に判断しないことが強調されています。
まず基本となるのが生活の見直しです。睡眠の確保、適度な運動、体重管理、ストレス対策など、これだけでも症状が改善することがあります。特に適度な運動の中でもレジスタンス運動(筋トレ)の継続をお勧めします。筋トレをするとテストステロンは一時的であっても上昇することが知られています。長期的にテストステロン値を上げるというよりは体組成を改善することで結果的に良いホルモン環境を作ると考えています。
症状が強い場合には以下を検討します。
| テストステロン補充療法(TRT) | 注射でホルモンを補う治療です。ただし、前立腺癌の既往や重度の心血管疾患などがある場合は慎重な判断が必要です。 |
|---|---|
| 漢方 | 倦怠感や気分症状に対して、漢方薬などを用いることもあります。 |
次のような症状が続く場合は、一度医療機関での相談をおすすめします。
上記に心当たりがある場合は、一度精査をするのもお勧めします。
LOH症候群は「年齢のせい」と見過ごされやすい病態ですが、適切に診断・治療すれば改善可能な状態です。ガイドラインでも、症状と検査を組み合わせた評価と、個々に応じた治療が重要とされています。気になる症状があれば早めに相談することが、健康寿命を延ばす第一歩です。