すぎはら眼科内科

Obesityシェイプアップ外来について

肥満症について?

いつでも食べたい物が手に入る豊かな時代になり、肥満による健康問題が増えています。近年は欧米だけでなく中国などのアジア諸国でも肥満が急増中で、世界中では20億人もの人が肥満傾向にあると推定されています。

日本における肥満の基準は「BMI(体格指数)25以上」と、内臓脂肪蓄積の指標となる「ウエスト周囲長 男性85㎝以上、女性90㎝以上」と定義されています。肥満の目安となるBMIは、体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)で求められます。厚生労働省の令和元年(2019)「国民健康・栄養調査」身体状況及等に関わる調査結果によると、日本人の肥満(BMI≧25)の割合は、男性33%、女性22.3%に上ります。さらにBMI35以上の高度肥満の方は、0.2~0.3%といわれております。今後、このような肥満度の高い人が増えてくる可能性があります。

肥満症とは、肥満と糖尿病、高血圧、睡眠時無呼吸症候群などのそれに関わる複合的な健康障害を抱えている状態です。中でも高度肥満症の方は、医学的に特に治療が必要な状態とされ、健康障害によるQOLの低下や生涯医療費の高騰も社会問題となっています。

肥満症の治療の必要性について

肥満は脂肪組織が過剰に蓄積した状態です。適度の脂肪組織は治療の必要はありませんが、BMI25以上で合併症を発症したり、健康障害が生じたりしている場合は「肥満症」と診断され、病気の範疇となり治療が必要です。肥満症は病気であるとまずは認識して、予防および治療をしていく時代です。肥満症を発症している方は社会的問題(職場や家族関係など)や精神疾患(うつ病や摂取過剰症など)を抱えていることもあり、かかりつけ医による総合的な予防および治療が必要です。肥満症の治療は数日で完結することものではなく、食事や運動に代表される生活習慣全般の見直し、家族関係や職場関係の悩み相談、治療を開始してからのリバウンド予防など長期間におよぶ細やかな外来診療が必要になります。病気の特質上、かかりつけ医での診療が最も望ましいものと考えています。もちろん難治性である場合や外科的な処置が必要な場合などは総合病院や専門施設へ速やかに紹介する体制の確保も肝要です。

肥満症の治療について

①治療の中心は食事療法と運動療法

食事療法や運動療法の具体的な方法については外来にて説明をいたします。まず3〜6ヶ月で現在の体重から3%の減量を目標としましょう。体重3〜5%の減少で脂質異常症、糖尿病、肝機能障害、高血圧などが改善することといわれています。

②身体測定の習慣化が肥満症治療の第一歩

自宅での毎日の体重測定はもちろんのこと、当院で行う筋肉量や脂肪量の測定も含めた全身状態の測定が肝要です。当院ではInBody(株式会社インボディ・ジャパン)を使用することでより詳細な測定を施行することができます。(測定自体は無料です。)

InBodyのイメージ

③薬物療養

上記の食事療法、運動療法、身体測定に加えて当院では下記の処方をいたします。


ウゴービ(肥満症に対して保険診療)(保険診療予定、発売準備中です。)

一般名は「セマグルチド」と言い、「GLP-1受容体作動薬」に分類されます。血糖値を下げるインスリンというホルモンの分泌を、血糖値に応じて促進したり、胃腸の働きを調整したり、満腹中枢に働きかけて食欲を抑制したりするお薬です。

糖尿病治療薬の「オゼンピック」「トルリシティ」「リベルサス」と同じ成分です。
投与方法は「オゼンピック」などと同様、週1回皮下注射を行います。容量は0.25㎎、0.5mg、1.0㎎、1.7mg、2.4mgの5段階があり、0.25mgからスタートし4週毎に増量していきます。

以下に該当する方は保険診療の適応になります。

  • 高血圧・脂質異常症・2型糖尿病のいずれかを有した肥満症患者
  • そのうちBMI:27以上で2つ以上の肥満に関連した健康障害※がある。
  • もしくはBMI:35以上。

※ここでの健康障害は冠動脈疾患(狭心症や心筋梗塞)、脳梗塞、脂肪肝、睡眠時無呼吸症候群、月経異常、変形性膝関節症、慢性腎臓病が該当します。

治療効果は、臨床試験では68週間後の体重が、ウゴービ2.4mg群で-13.2%、ウゴービ1.7mg群で-9.6%、プラセボ群で-2.1%という結果です。およそ1年間投与を継続することができれば概ね10%の体重減少が期待できます。

ウゴービは2024年2月22日に発売されることが決定しました。この発売はアジアで初めてであり世界では6ヶ国目となります。しかし、厚生労働省はGLP-1受容体作動薬の乱用を防ぐため、処方可能な施設を肥満症治療に関連する学会の専門医が常勤している教育研修施設のみに制限したため、ほとんどのクリニックでは保険診療でウゴービを発売直後からは使用することはできないことになりました。そこで、当院では肥満症患者さんに対してウゴービの使用が適切かどうかを判断し、必要であれば総合病院に紹介することを検討しています。


マンジャロ(肥満症に対しては自費診療)

一般名は「チルゼパチド」です。上記のウゴービのGLP-1受容体に作用するだけでなくGIP受容体にも作用して、さらなる体重減少効果が期待されます。投与方法は週1回注射です。治療効果は、臨床試験では40週間後の体重がマンジャロ15㎎で‐13.1%という結果で、ウゴービよりも短期間での体重減少効果が示されています。

2.5㎎ 3,300円(税込)
5㎎ 6,600円(税込)
10㎎ 13,200円(税込)
15㎎ 19,800円(税込)

マンジャロの需要は世界的に高く、時に供給量が追い付かず、当院の在庫がない場合があります。その際は投与することができませんのでご了承ください。
なお、当院のシェイプアップ外来は生活習慣病の予防と改善を目的としており、美容目的や単純な減量目的での薬物投与は行いません。マンジャロは生活習慣病のない方でBMIが30以下の方、あるいは生活習慣病がありBMI27以下の方の安全は確立されておりませんので、それら以外の方の投与は厳重に慎重に行っております。


リベルサス(肥満症に対しては自費診療)

一般名は「セマグルチド」で上記のウゴービと成分は同じです。ウゴービは週1回注射ですが本剤は内服です。注射をすることに抵抗がある方はこちらをお勧めします。飲み方に注意が必要で、朝起きてすぐに服用し、その後は30分くらい食事や水分を摂取することができません。(胃の中に食事や水分があると、有効成分の吸収が減ってしまうため、服用後は2時間くらいあけるのが理想です。)

一錠 3mg 要相談
一錠 7mg 要相談
一錠 14mg 要相談


カナグル(肥満症に対しては自費診療)

一般名は「カナグリフロジン」で内服剤です。過剰な糖分を尿から排出する薬です。体重減少の効果は高いので、炭水化物をやめられない方にお勧めの治療薬です。体重は延々と減り続けるのではなく、ある程度のところでプラトーに達することがあります。カナグル以外の同様の作用機序の内服薬も自費診療で処方をすることができますのでご相談ください。

一錠 100mg 440円(税込)


漢方薬 防風通聖散(保険診療)

18種類の生薬からなる漢方薬です。脂肪を燃焼させ肥満症を改善する効果があることが、昔から知られています。効果を実感できるまで1ヶ月以上は継続する必要があります。副作用には下痢や嘔気などの消化管症状、肝臓機能の異常、偽性アルドステロン症があげられます。保険適応で処方します。


アライ 肥満改善薬 (保険診療予定、発売準備中です。)

アライ(一般名オルリスタット)は内臓脂肪や腹囲、体重を減らす効果のある薬品で、脂肪吸収を阻害することで体内に吸収されるはずだった脂質を体外に排泄させる作用があります。現在発売準備中です。
食事によって摂取した脂質はリパーゼが分解することで、小腸などの消化管から体内に吸収されます。アライは、リパーゼのはたらきを阻害することで脂質の吸収をさまたげ、体内に吸収されるはずだった脂質をからだの外へ排泄する作用があります。臨床試験の結果では日本人200人も盲検試験で24週間内服で体重は約2.1kgの減少を認めました。1年間の内服で約4.0kgの減少を認めております。副作用は本来体内に吸収されるはずの脂質の吸収をさまたげ、からだの外へ排泄されるため、便が油っぽくなる、便が近くなる、下痢、腹部膨満感などがあります。


マジンドール (BMIが35以上の場合は保険適応 それ以外は自費診療)

マジンドール(一般名サノレックス)は、厚生労働省が承認している食欲抑制剤です。BMIが35以上の場合、保険適応となります。それ以外の方で内服を希望される場合は、自費治療です。脳内の中枢の視床下部に作用して満腹中枢を刺激して食欲を抑制します。空腹感が少なくなり、食べる量が減ることが期待されます。また、代謝をよくする作用もあります。治療効果には個人がありますが2週間で90%近くの方が食欲の抑制効果を実感できるとされています。内服できる期間は最大で3か月です。1か月内服をしても効果が乏しい場合は中止をします。以下に該当する方は内服できません。緑内障の方、重症の心臓・膵臓・腎臓・肝臓に障害のある方、重症高血圧症の方、脳血管障害のある方、不安・抑うつ・異常興奮状態の方、統合失調症等の精神疾患のある方、薬物・アルコール乱用歴のある方、妊婦又は妊娠している可能性のある方、小児の方です。
主な副作用は口渇感、便秘、下痢、口中苦味感、倦怠感、脱力感、悪心、胃部不快感などです。さらに注意すべき点として、この薬には依存性があり長期に内服することはできません。また肺高血圧症を惹起することがあり息切れなどの症状がでた場合は服用中止です。

一錠 0.5mg 550円(税込) (自費診療)


上記の薬物治療以外にも肥満症を加療したい患者さんの個々に応じて、内服薬の種類を変更したり、量を調節したり適切な処方をいたします。

皆様へ

肥満症は、放置しておくと様々な合併症を引き起こす可能性があります。しかし、専門的な治療を受けることで、健康的な生活を手に入れることができます。当外来では、患者さんに合わせた栄養療法や運動療法を行い、減量を促すだけでなくリバウンドしない生活習慣の改善を目指しています。また、薬物療法はもちろんのこと、専門施設での手術療法も適切に御提案いたします。一人で悩んでいるのではなく、医療従事者の専門家のサポートを受けることで、これまでとは全く異なる健康な生活を手に入れることができます。当外来は患者さんの状態に応じた最適な治療を提供します。健康的な生活を取り戻すためにシェイプアップ外来に一度受診してみることをおすすめします。

参考文献:

  • 糖尿病治療ガイド2023
  • Lancet Diabetes Endocrinol, 2022 Mar;10(3):193-206