すぎはら眼科内科

SAS睡眠時無呼吸症候群について

睡眠時無呼吸症候群
(SAS:Sleep Apnea Syndrome)とは

睡眠のイメージ

睡眠時無呼吸症候群(SAS:Sleep Apnea Syndrome)とは睡眠中に呼吸が止まる、あるいは低呼吸になる病気です。

睡眠中に十分な呼吸ができなくなると、体に取り込まれる酸素の量が少なくなって、さまざまな臓器に障害をもたらします。主な症状は、日中の強い眠気で、車の運転や大事な会議中にも関わらず、眠気が我慢できなくなることがあげられます。また、頭痛、めまい、食欲低下など心身に不調をきたします。

強い眠気のために仕事や生活全般の活動が低下することや、居眠りなどの所作のため対人関係においても悪印象を及ぼすことがあります。最近では肥満、心不全、糖尿病、高血圧などの生活習慣病との深い関わりがあることが明らかになってきています。

睡眠時無呼吸症候群の症状は?

睡眠不足のイメージ

睡眠時には、いびきをかく、息が止まる、呼吸が乱れる、息が苦しくて目が覚めるなどがあります。昼間には、しばしば居眠りをする、記憶力や集中力が低下する、性格が変化する、体を動かすときに息切れするなどの症状があります。

上述したように昼間の強い眠気が主な症状で、1980年代ごろから運転中の居眠りの原因として本疾患が注目されており、社会的にも大きな問題となっております。致死的な交通事故の15~33%には居眠り運転が関与しているとの報告があり、睡眠時無呼吸症候群は安全運転の重大なリスクの一つといえます。長距離運転をされる方や居眠りでヒヤリしたことがある方は一度検査をしてみることをお勧めします。

睡眠時無呼吸検査の頻度は?

定義によって若干の差がありますが、睡眠時の無呼吸がありかつ昼間の眠気を伴う症状を有する人は男性で5%前後、女性で2~3%といわれています。

睡眠時無呼吸症候群と関連する病気は?

睡眠時無呼吸症候群の検査は?

睡眠時無呼吸症候群の可能性がある場合は当院では以下の二つの検査をすることができます。

簡易睡眠検査

睡眠時無呼吸検査の可能性がある場合はまずこの検査からいたします。

自宅にご自身で簡単に取り扱い可能な検査機器が郵送で送られてきます。この簡単な検査機器を用いて、普段寝ている場所で検査をすることができます。指先と鼻の下にセンサーをつけて測定を行い、いびき、呼吸の状態、酸素の取り込み状況を調べることができます。これにより無呼吸・低呼吸の1時間当たりの数(AHI)を測定することでき睡眠時無呼吸症候群であるかどうかと重症度をおおまかに診断することできます。

この疾患であることが強く疑われる場合には、さらに精密な終夜睡眠ポリグラフ検査をすることをお勧めします。

検査の手順

当院

簡易睡眠検査の説明を受ける。

自宅

検査機器が郵送で届く。
いつもの就寝する場所で装置をつけて二晩就寝する。
検査機器を郵送で送る。

検査結果が判明するのにおよそ2週間かかります。
当院

当院に検査結果が届き、本人に電話で届いたことをお伝えします。

簡易睡眠検査のイメージ

終夜睡眠ポリグラフ検査
(PSG検査)

この検査は睡眠時無呼吸症候群の検査の中で最も精密な検査です。

脳波、筋電図、心電図、呼吸、血液中の酸素飽和度などを測定します。

この検査によりAHI、酸素低下状態、睡眠の質、不整脈などを評価し総合的に診断することができます。この検査は自宅ではなく、一定の環境で精密に検査をするために当院に1泊2日入院の上検査を行います。

検査の手順

当院

終夜睡眠ポリグラフ検査の説明をうける。

当院

①検査希望日の午後7時に当院東口に来院ください。
夕食やお風呂は済ませておいて、当院には寝るだけの状態で来院してください。

②検査機器を医師が装着いたします。
個室でゆっくりとお過ごしいただき、ご自身のタイミングでご就寝ください。

③翌日の朝7時に起床していただきます。
検査装置を医師が外して帰宅できます。

検査結果が判明するのにおよそ2週間かかります。
当院

当院に検査結果が届き、本人に電話で届いたことをお伝えします。

終夜睡眠ポリグラフ検査のイメージ

睡眠時無呼吸症候群の治療は?

治療は主に3つです。

  1. 生活習慣の改善(主に肥満の解消)
  2. マウスピース
  3. CPAP(Continuous Positive Airway Pressure)療法(持続陽圧呼吸療法)

生活習慣の改善について

減量

肥満は睡眠時無呼吸症候群の最も重要なリスクのひとつです。減量は上気道の構造的な負担を和らげることにより気道の閉塞を軽減し無呼吸を軽減させます。10%程度の体重減少でAHIが26%低下したという報告があります。

睡眠時の体位

仰向けになると舌が落ち込み、気道が閉塞するため無呼吸が悪化すると言われております。このため体を横向きにして眠ると無呼吸が減るということが知られております。

飲酒・睡眠薬の制限

アルコールや睡眠薬は筋肉を緩める作用があり、気道の閉塞が起こりやすくなります。このため無呼吸症がある人は飲酒や睡眠薬の摂取には注意が必要です。

マウスピース

下あごを上あごより前方に固定させることで、上気道を広く保ち、空気の通り道を各日して、いびきや無呼吸を改善する治療法です。マウスピースは専門の歯科医にご紹介をして作成をしてもらいます。

CPAP療法

睡眠時無呼吸症候群の治療で最も確実で最も効果のある治療方法です。PSG検査でAHI>20以上にて保険診療にてCPAP治療が適応となります。

CPAPとは睡眠中に鼻あるいは鼻と口に装着したマスクから空気を送り込み気道の閉塞を予防するものです。

CPAPを使用すると最初のうちは慣れないために、違和感がありますが、1~2か月もすると慣れてきます。慣れないうちは、一晩に少なくとも4時間は使用することを目安にしてください。4時間使用することができればCPAPの効果が実感でき、心不全や高血圧の発症や悪化を抑制することができます。さらに慣れてきますとこれまでには感じたことがないような質の高い睡眠を体験することできます。ぐっすりと眠れて、すっきりと目覚めることができ、昼間の眠気も解消され快活な日常を取り戻すことができます。

また、CPAPを使用することにより心不全、高血圧、糖尿病などの合併症の治療も可能となり、正常な方と同じくらい長生きをすることができます。

CPAPの注意いただきたい点は、CPAPのみでは体重の減少効果はありません。CPAPをしながら生活習慣全般の改善を目指し、減量するようにしてください。

また、CPAPは継続して使用することで効果を発揮します。中断は可能限り選択せず、継続することを心掛けてください。原則1か月に1回当院に通院をしていただきながらCPAPの治療効果、機器の状態をチェックしていきます。通院が困難であってもお電話で遠隔診療も可能ですので相談しながら継続していきましょう。

睡眠時無呼吸症候群の治療後のイメージ

参考文献:

  • 睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン