糖尿病は、血糖値が高くなり続けている代謝疾患のことです。人間の体は、食べた糖質をインスリンというホルモンを利用して血糖値を調整することができますが、糖尿病の場合はこの調整機能が欠如しているため、血糖値が高まり続けます。これが続けば、様々な健康被害を引き起こします。糖尿病は、主に2種類に分類されます。一つは膵臓内分泌不足を原因とする1型糖尿病、もう一つはインスリンの効果への抵抗性を原因とする2型糖尿病です。糖尿病は適切な治療と生活習慣を改善することが重要です。
日本では、糖尿病の罹患率が高まっています。2019年には、約960万人の日本人が糖尿病と診断されています。この増加は、日本の人口の老齢化や肥満の増加、不健康な食生活などが原因とされています。また、糖尿病は家族歴がある場合やストレスなどのライフスタイル要因も発症リスクを高めることがあります。
糖尿病の病態は、高血糖値が続くことによって起こります。通常、人間の体は食べた糖質をインスリンというホルモンを利用して血糖値を調整することができますが、糖尿病の場合はこの調整機能が欠如または低下しているため、血糖値が高まり続けます。
この高い血糖値は、糖尿病によって起こる多くの被害を引き起こします。例えば、高血糖は血管を損傷することがあり、これは動脈硬化や心臓病、腎臓病などの慢性疾患のリスク増加につながります。また、高血糖は神経細胞の損傷を引き起こし、糖尿病性ニューロパチーといわれる神経障害を引き起こすことがあります。さらに、高血糖は免疫システムを損傷することがあり、これは感染症や皮膚疾患などのリスク増加につながります。さらに、視力低下や眼底疾患などの眼疾患を引き起こすことがあります。
適切な治療と生活習慣の改善により、糖尿病が引き起こす被害を最小限に抑えることができます。
糖尿病を改善するための生活習慣の改善は欠かせません。改善には、健康的な食生活、適度な運動、ストレスの軽減、十分な睡眠などが重要です。正しい栄養バランスのもとで均等な食事を心がけ、適度な運動を続けることで、血糖値のコントロールが改善されます。また、ストレスを感じた際はリラックスすることが大切です。十分な睡眠をとることで、ストレスや免疫力の低下を防ぎます。生活習慣を改善することで、糖尿病の病態を改善することが期待できます。
今回は代表的な経口薬物療法について説明します。注射薬も多数ありますが当院では経口内服薬のみでも良好な経過の患者さんも多くおられます。経口薬は主に①糖吸収・排泄調節薬②インスリン抵抗性改善薬③インスリン分泌促進薬に分類されます。
作用機序 | 糖の吸収を遅らせ食後の高血糖を抑制します。血糖コントロール改善効果に比べて体重増加がしにくいことや低血糖を引き起こす可能性は低いことがあげられます。必ず食直前に服用する必要があります。 |
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副作用など | 腹部膨満感、放屁の増加、下痢などの副作用があります。 |
作用機序 | 腎臓の近位尿細管でのブドウ糖の再吸収を抑制することで、尿糖排泄を促進し、血糖低下作用を発揮します。体重低下が期待できる特徴があります。 |
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副作用など | 尿路感染症や脱水に注意が必要です。 |
作用機序 | 肝臓での糖新生の抑制が主たる作用機序ですが、消化管からの糖吸収の抑制、末梢組織でのインスリン感受性の改善効果も有しています。体重が増加しないので、肥満の糖尿病では第一選択となる場合が多いです。 |
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副作用など | 重篤な副作用として乳酸アシドーシスがある。肝・腎・心・肺機能に問題のある患者、循環障害、脱水などがある患者には慎重な投与が必要です。ヨード造影剤を使用する場合には前後で投与中止が必要です。 |
作用機序 | インスリン抵抗性を改善して血糖降下作用を発揮します。 |
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副作用など | 水分貯留傾向となるため、浮腫や心不全に注意が必要です。海外の試験では骨折の頻度上昇や、膀胱癌のリスクを高めたと報告されています。 |
作用機序 | 膵β細胞膜上のSU受容体に結合しインスリン分泌を促進し、短時間で血糖を低下させます。インスリン分泌能が保たれているが、食事療法や運動療法によっても良好な血糖コントロールが得られない患者さんに使用します。インスリン抵抗性が強い患者にはよい適応とはなりません。 |
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副作用など | 少量でも低血糖を起こすことがあります。高齢者では注意が必要です。肝・腎障害のある場合は、遅延性低血糖をきたすリスクがあるので注意を要します。体重増加をきたしやすいとされています。 |
作用機序 | 膵β細胞膜上のSU受容体に結合しインスリン分泌を促進し、服用後短時間で血糖降下作用を発揮する。SU薬に比べて吸収と血中からの消失が早いため、食後高血糖のよい適応です。 |
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副作用など | 一日3回必ず食直前に内服する必要があります。食前30分投与では食事開始前に低血糖を起こす可能性があります。肝・腎障害の患者では低血糖が遷延することがあります。 |
作用機序 | DPP-4選択的阻害により活性型GLP-1濃度および活性型GIP濃度を高め、血糖降下作用を発揮します。血糖コントロール改善効果に比べて体重増加がしにくいとされています。 |
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副作用など | 腸閉塞を発症する可能性があります。 |
作用機序 | 活性型GLP-1濃度を直接高め血糖降下作用を発揮します。体重減少効果があり高度肥満には特に有効です。 |
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副作用など | 腹部膨満感を発症する可能性があります。食事開始30分前には内服する必要があります。 |
作用機序 | 膵臓の細胞内のミトコンドリアに作用してインスリン分泌を促す。肝臓や骨格筋のミトコンドリアにも作用して糖代謝の改善効果もあります。 |
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副作用など | 消化器症状をおこすことがあります。 |
糖尿病診療の目標は、合併症である血管障害の進展を防止して日常生活の質(QOL)を維持し健康寿命を確保することです。今後も当院は、早期の診断、適切な治療、生活の支援を施行し、皆様がよりよい人生を構築することを応援いたします。